007 話す・言う( TALK / SPEAK / SAY / TELL )

TALK はものを言うこと
SPEAK は声を出すこと
SAY セリフを発すること
TELL は何かを伝えること

日常会話でよく使うのはもちろん、高校入試や大学入試でも頻出の「話す・言う」を意味するこれらの動詞は、感覚的に使い分けている人が多いようです。でも、それじゃまずいですよ。似ているようでもまったく違うんですから。ここで違いをはっきりさせておきましょう。まずはもっとも違いのわかりにくいtalkとspeakから。

(a) You are talking all the time. 「お前はいつもしゃべってばかりだな。」

小学生のころに、先生からよくこう言って叱られたものです。この文ではspeakは使えません。speakは「声をだすこと」を表します。一方向の話について使い、必ずしも聞いてもらう相手が必要なわけではないんです。また、talkよりもきちんとした内容の話であることが多いようです。だから、いくら声を出しているとはいえ、授業中に他の生徒とおしゃべりしている子どもに対して、“You are speaking all the time.”とは言いません。

(b) Speak more clearly. 「もっとはっきりしゃべりなさい。」
(c) Who’s going to speak next?「次のスピーチは誰ですか。」

上の(b)は「声を出す」という意味。(c)は「きちんとした内容を話す」という意味から、「スピーチをする」(=make a speech)という状況を表しているのがわかります。一方でtalkは、(a)の文からもわかるように「おしゃべり」を表す語で、双方向的な感じを表すことが多いです。また、talkative「おしゃべりな」という形容詞からもわかるとおり、話す内容ではなく話す行為に焦点が置かれます。あえて話す内容について触れたい(話題が何なのかをはっきりさせたい)場合は、aboutやofを用いて“What are you talking about?”のように言います。

(d) The baby is learnig to talk, but she can’t speak yet. 「その赤ん坊はものを言うようになってきたが、まだきちんと話せない。」
(e) In business, money talks. 「ビジネスにおいては、金がものを言う。」

これらの例文もtalkの特徴をよく表していますね。特に(d)はtalkとspeakの違いがよくわかります。(e)は「金が相手を動かす」という行為がクローズアップされています。大学入試でもよく出る表現なので覚えておきましょう。

では、お次はsayとtellに移りましょうか。sayは“Say cheese.”(日本語では一般的に「ハイ、チーズ」)というセリフにその特徴がよく表れています。そのまま日本語にすると、「チーズと言え」となります。チーズという時の口の形は口角が上がり、にっこり笑った時の顔になるから、写真を撮る際の決まり文句になったのです。ここで大切なのは、実際に“cheese”というセリフを口から発するということです。だから、He said,“I broke the window.”のように、sayは引用符(quotation marks)を使って直接話法で語るときに用います。

(f) Say hello to your grandparents. 「お祖父さん、お祖母さんによろしく。」
 ※say hello to~:「~にhelloと言う」から「よろしく言う」
(g) Say what you really are thinking. 「本音を言えよ。」

(g)は直接話法ではありませんが、本当に考えていることを言葉にして言うように促しているのですからsayです。このようにsayが「言葉を発する」ところに着目するのに対して、tellは「内容を伝える」ところに着目する語です。だから、“tell the truth”「真実を語る」とか“tell a joke”「冗談を言う」とかいうふうに言います。決してsay the truthやsay a jokeとは言いません。中高生に「冗談を言う」を英語にしてもらうと、“say a joke”という人が多いです。理由を尋ねてみると「『言う』はsayだから」と言います。いやいや、ちょっと待って。「言う」=say、「話す」=tellみたいな覚え方は絶対にしないでくださいね。

(h) He told me how he felt about the story. 「彼は私にその話についてどう思ったかを話してくれた。」

さて、ここで受験を控えた中高生のために、これら4つの単語に関する語法問題へのアプローチ方に触れておきましょうか。ホントによく入試に出ますので。以下に実際の大学入試問題を3つ出しますので、しっかり根拠をもって答えを選んでみてください。

(1) There are a lot of expressions used by English people when ( ) about the weather.
 ① discussing ② saying ③ talking ④ telling
 (センター試験)
(2) He ( ) me over the telephone that he would be late in coming home.
 ① said ② spoke ③ told ④ talked
 (神奈川大)
(3) The president is to ( ) on television this evening.
 ① speak ② express ③ say ④ tell
 (亜細亜大)

さぁ、解説です。ここまでtalk, speak, say, tellの4語の意味、ニュアンスの違いについて述べてきました。この違いは大学入試においても重要ですから絶対に覚えて欲しいのですが、入試の選択問題でこれらの単語が出てきたら、まずは「自動詞か他動詞かが問われているんだな」と考えてください。自動詞は目的語をとらず、他動詞は目的語をとります。つまり、他動詞は基本的には直後に名詞(代名詞、動名詞、名詞節を含む)がきます。このことを前提として、各語のポイントを以下にまとめます。

talk:自動詞、talk to(with)人、talk about(of)~
speak:自動詞、speak to人、ただし、言語やthe truthを目的語とする他動詞用法もある。
say:他動詞、セリフやthat節を目的語にとれるが、人を目的語にとれない。
tell:他動詞、人も人以外のものも目的語に取れる。SVO,SVOO,SVOCの3つの文型で使用できる。
※discussとexpressはどちらも他動詞

気づきましたか?視点をまず「自動詞・他動詞」に絞ってみると、上の3問は一撃で解けてしまいます。(1)と(3)は、それぞれ( )の後ろがabout the weather, on television, this eveningという副詞句であって、名詞ではありませんね。つまり、( )の後ろには目的語がなく、( )には自動詞が入るのです。よって(1)は③talkingが答え。(3)は①speakが答えとなります。一方、(2)は直後にmeという代名詞(名詞)がありますので、答えは他動詞です。他動詞は①saidと③told。でも、sayは「人を目的語にとれない」んでしたね。よって、答えは③です。よく勉強している人からはtalkが目的語をとる文を見たことがあるとツッコミを入れられそうですが、“talk O into ~ing”「Oを説得して~させる」と“talk O out of ~ing”「Oを説得して~しないようにさせる」という例外(talkの他動詞用法)にだけ注意しておけば、4つの動詞の中で人を目的語に取れるのはtellだけだと言えます。よって、(2)は人が目的語に来ていることから③toldが答えだろうなと予想し、talkの例外用法を確認すれば一瞬で解けるのです。

どうでしたか?会話、作文、入試の語法問題など、なにかと重要な「話す・言う」系の単語たち。辞書などで、できるだけたくさんの例文に触れて感覚をつかむとともに、受験生のみなさんは「自動詞・他動詞」という視点をぜひ身につけてくださいね。

006 親切な・優しい( KIND / NICE )

KIND は身近でない人
NICE は身近な人

 ある人が親切だというとき、皆さんはおそらく“kind”という語を思い浮かべるでしょう。決して間違っているわけではありませんよ。でも、日本人は何でもかんでも“kind”で、他の選択肢を持っていないというのが現状のようです。

(a) My father is very kind. 「うちの父はとても優しい。」

この英文は文法的にも意味的にもまったく問題のない正しい文です。ただし、この英文を「うちの父はとても優しい。」と訳すことに少し違和感を感じます。皆さんは、この日本語訳を見たとき、発言者である「私に対して」優しいという感じを受けませんか?「うちの父はとても親切です。」と訳せば「他人に対して」優しいという感じがしますが、「うちの父はとても優しい」と訳せば「私に対して」優しいという感じがしますね。例えば、「うちの父はとても親切です。」と聞けば、電車でお年寄りに席を譲ってあげるとか、障害者が困っていたら手を貸してあげるとか、そんな感じのことを思い浮かべますよね。他方、「うちの父はとても優しい」と言えば、母親みたいに失敗してもガミガミ言わないとか、お小遣いをよくくれるとか、駅まで車で送ってくれるとか。てことは…無意識のうちに使い分けているのでしょうが、日本語の「親切な」と「優しい」の間には微妙な違いがあるようですね。

 話を英語に戻しましょう。実は英語も同じで、“My father is very kind.”は「うちの父は(他人に)親切です。」という意味になるんです。もちろん、これは自分に対して優しいという意味も含んでいるのかもしれませんが、基本的にkindは「見ず知らずの人に対して親切だ」という意味を表します。また、「見ず知らずの人が自分に対して親切だ」と言いたい時にもkindを用います。見ず知らずの人と言いましたが、一般に身近でない人と考えればいいでしょう。

(b) The old man was kind to me. 「そのおじいさんは私に親切だった。」
(c) It was so kind of you to help us. 「お手伝いいただきありがとうございました。」

 もちろん(b)(c)のThe old manとyouはどちらも身近でない人です。それでは、身内や友人、会社の上司などの身近な人に対してはどのような表現を使うのでしょうか。

(d) My grandfather was nice to me. 「うちのじいちゃんは私に優しかった。」
(e) It was so nice of you to help us. 「手伝ってくれて、ありがとう。」

 おわかりですか?身近な人について言う時は“nice”を使うんです。日本人のほとんどが、このような場合にもついつい“kind”を使ってしまいます。それでも問題ない場合もありますが、場合によっては皮肉にとられることもあるので気をつけましょうね。“My boss is very kind to me.”と言えば、たとえ「上司がよくしてくれる」という意味で言ったとしても、嫌な上司に対して皮肉で言っていると捉えられる可能性がありますので。

 では、最後に“kind”と“nice”を使った文をいくつか見てみましょうか。

(f) Be kind to old people. 「お年寄りに親切にしなさい。」
 ※お年寄り一般に対してだから“kind”
(g) Be nice to your sister. 「妹に優しくしなさい。」
 ※妹は身近な存在なので“nice”
(h) Be nice to Pochi. 「ポチに優しくしなさい。」
 ※ポチは家族同様のワンちゃんです。
(i) You are being very kind to me. 「いやに優しいのね。」
 ※Youは身近な存在ですが、“are being(現在進行形)”からもわかるように、「今だけ」に着目して「いつもと違って今日は優しいのね」と皮肉たっぷりに言っているので“kind”がピッタリ。

 こんな感じです。でも、難しいことじゃないですよね。まぁ、皮肉を言えるレベルになれば完璧ですが、そこまで望まないのなら、要は身近な存在には“kind”ではなく“nice”を使えばいいのです。

005 仕事( WORK / JOB / OCCUPATION / PROFESSION / CAREER )

WORK は精神的・肉体的な仕事の内容
JOB は個々の具体的な仕事
OCCUPATION は改まった仕事
PROFESSION は専門職の仕事
CAREER は長い間かけて築いた職歴

「仕事」と聞くと、おそらくworkやjobを思いつく人が多いと思います。他にもoccupationやprofession、careerなどがありますが、workとjobはどちらも幅広い意味で仕事を表すため意味的にかぶっている部分が大きく、実際にどっちを使えばいいのか分からないようです。まずはworkとjobの使い分けから見ていきましょう。

 「彼は仕事を探しています。」という日本語を英訳するとき、次の2つのうちでどちらが正しいと言えるでしょう?

(a) He is looking for work.
(b) He is looking for a job.

 結論から言いましょうか。どちらも正しい、というのが答えです。workは「仕事」を表す最も一般的な単語で、不可算名詞ですから‘a work’とはならず無冠詞で使います。

(c) When do you start work? いつ仕事始めるの?
(d) The people at work sang a song for me. 職場の人たちが歌を歌ってくれた。

 「彼は仕事をさがしています。」に対する英語では、workでもjobでもどちらでもOKでしたが、(c)の「いつ仕事始めるの?」は、workを用いなければなりません。もちろん文法的には‘When do you start a job?’でも問題ありませんが、意味が違ってしまいます。ここでjobを用いると、「いつ職に就くの?」という感じになります。このことは、‘start a second job’(副業を始める)や‘start a new job’(新しい職に就く)という表現からもわかると思います。また、workには「職場」や「勤め先」の意味もあります。(d)はまさにその意味で用いた例ですね。

 上記のようなことを考えると、workは仕事といってもどうやら「労働」「任務」というニュアンスを持っているようです。つまり「精神的・肉体的な仕事の内容」を表すのです。他方、jobは「職業」「勤め(口)」と考えられますね。また、皆さんよくご存知の‘You did a good job.’とか‘Good job!’(よくやったね!)というセリフからもわかりますが、掃除やお手伝いなどの「しなければならない個々の仕事や課題」を表すこともあります。つまり「個々の具体的な仕事」「分類としての仕事」を表します。

では、workとjob以外の語も見てみましょう。occupationは公式文書で使うのが普通で、会話で使うことはほとんどありません。申込書や履歴書などの「職業」欄には‘OCCUPATION’と書かれています。professionはハイレベルな訓練や教育を必要とする仕事、すなわち「専門職」を指します。教師、医者、弁護士、技術者などがそれに当たります。そして、カタカナ英語としてすっかり日本語に溶け込んでいるcareer(キャリア)は、時間をかけて築いた「職歴」の意味です。

(e) Please state the occupation on the form. 「書類に職業をご記入ください」
(f) Lisa is thinking of entering the teaching profession. 「リサは教職に進もうと考えている。」
(g) Luice spent most of her career working in America. 「ルイスは生涯の大部分をアメリカで働いて過ごした。」

以上のように、少し使い分けが難しいので、辞書を引いて多くの例文に触れておくようにしましょう。

004 大きい・小さい( LARGE / BIG ・ SMALL / LITTLE )

LARGE / SMALL は客観的な大小
SMALL / LITTLE は主観的な大小

 衣服について話していて「サイズは?」と尋ねられた際に、「Lだよ。」と答えたとします。ここでみなさんは「Little Sizeだな。」などとは思いませんよね。当然「Large Sizeだな。」ですよね。このような間違いをする人はまずいないと思いますが、「largeとbigを使い分けられるか」という話になると、ほとんどの人が「同じじゃないの?」というレベルなのではないでしょうか?ここではlargeとbigの違い、また、その反意語であるsmallとlittleの違いについて採り上げます。

 ファーストフード店で「Largeサイズ」のコーラを注文したとしましょう。注文するときには欲張って大きなサイズを選ぶのですが、歳をとったせいでしょうか、実際にカップを目の前にすると、「SかMでよかったかも…」と思うことがよくあります。このとき私の頭の中は‘Oh, it’s too big for me.’です。ここでlargeとは言いません。Largeサイズのカップについて話しているのに、largeはダメでbigなのです。なぜかというと、「largeは客観的(物理的)な大きさを表すのに対して、bigは主観的(感情的)な大きさを表す」からです。注文時には、カップのサイズという客観的・物理的大きさが伝えたい内容ですよね。それが、カップを目の前にして「デカすぎて飲めない」という時には、「オレには無理だ~」という主観・感情が込められます。

(a) Well, I think I’ll order a large size, but maybe it’s too big for me.
「う~ん、Lサイズにしようかなぁ。でも、大きすぎるかも。」

 では、質問です。次の英文にはlargeかbigのどちらを使えばよいでしょうか?

(b) How ( large / big ) is Osaka?

 結論から言うと、どちらも正解です。How large is Osaka?と言うと、大阪の物理的な大きさを尋ねていることになるので、「○○平方キロメートルだよ」とか「○○と同じぐらいの広さだよ」などと答えればよいでしょう。他方、How big is Osaka?では、もちろん物理的な大きさ(面積)が答えの中心にはなるでしょうが、それに加えて人口や経済規模などの「プラスα」も答えの範囲に含まれます。そう考えると、「大阪は大都会だ。」という場合には、‘Osaka is a big city.’とは言えても、‘Osaka is a large city.’とは言えないような気がしますね。大阪は800万人以上の人口を抱え、経済都市としても重要な役割を果たしているのですから、まさに‘a big city’でしょう。しかし、私の個人的な感覚では決して面積的に大きな都市とは思えないので、‘a large city’というのには違和感を感じてしまいます。ニューヨークならどちらも当てはまるのでしょうが。(そう言えば、ニューヨーク市の別名は‘Big Apple’ですね。)

(c) The population of Tokyo is larger than that of Osaka. 「東京の人口は大阪の人口より多い。」
(d) Oh, that’s a big problem. 「うゎあ、そりゃ、大問題だ。」
(e) The demonstration was a big success. 「実演は大成功だった。」
(f) George has a big heart. 「ジョージは心が広い。」

 (c)のように数量を問題にする場合、客観性が強いのでlargeを用います。大学入試では、more (manyの比較級)ではなくlargerを用いる点が重要なポイントとなりますね。人口や観客(聴衆)、収入のような「総数・規模」について言う場合は、その「大小」が問われますので‘large or small’で表します。(d)(e)(f)はどれも主観的・感情的な判断ですからbigを用いていますね。‘a big problem’は「重大だ」「深刻だ」という意味ですし、‘a big success’は「すごい」という感情が含まれます。‘have a big heart’に至っては、‘have a large heart’とすると「(人と比べて)大きな心臓を持っている」と捉えられてしまいます。

 largeとbigの違いはわかりましたか?実はsmallとlittleについても同じことが言えるのです。

(g) He is too small to be a volleyball player. 「彼はバレー選手になるには小さすぎる。」

 体が小さくても全日本で活躍する選手がいることは間違いありませんが、バレーボールにおいては身長が高いに越したことはないのは言うまでもありません。ここでは見た目の大きさについて言っていますのでsmallを用います。

(h) What a pretty little girl! 「なんて可愛いらしい子なんでしょう!」

 この場合、pretty (かわいい・綺麗な)があるのでsmallでもいいかもしれませんが、自分の娘に対して言われるとしたらlittleの方が嬉しいですよね。littleはbigに対応しており、主観・感情が込められます。特にprettyやsweetなどのプラスイメージを与える語と共に使って「愛らしさ」を表現します。しかし一方で、マイナスイメージを与える語と共に使うと正反対の意味となります。例えば、‘Jimmy is a nasty little boy.’は「ジミーは不愉快なガキだ。」です。‘Don’t worry about such a little thing.’と言えば、「そんなつまらないことでくよくよするなよ。」となります。

 では最後に、次の英文の間違っている点はなんでしょうか。考えてみてください。

(i) *I lived in Sapporo when I was little. 「私は小さいころ札幌に住んでいた。」

 この短い文の中には、完全な間違いが1つと違和感を感じる点が1つあります。まずは完全な間違いから正しましょう。文法用語を使って一言で説明するならば、「littleは限定用法で用いる形容詞で、叙述用法では用いない」となります。つまり、「名詞の前に置いて名詞に直接かかる形容詞で、補語として主語(目的語)を説明することはない」のです。ならば、‘I lived in Sapporo when I was a little boy.’にすれば良いのかというと、それでも違和感を感じてしまいます。それが2点目で、実はこの文の内容でlittleを用いること自体が、間違いとは言わないまでも、違和感を感じる表現なのです。littleは感情を伴う語ですから、自分の子供のころを「愛くるしい少年時代に」と言っていることになります。主語が自分以外ならいいのですが、‘when I was a little boy’にはどうも違和感を感じます。‘when I was small’や’when I was a small boy’とした方が自然といえます。

いかがでしたか?今日学んだことがみなさんにとって‘big fish’(大物=大きな学び)であったことを祈ります。

003 見る( LOOK / SEE / WATCH )

LOOKは視線を向けること
SEEは目で感知すること
WATCHは動きや変化を目で追うこと

「『見る』という意味の英単語は?」と聞かれて、皆さんのほとんどがlookかseeあるいは両方を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん、それでOK!でも、なんで2つあるんだろう?今回のメインテーマはlookとseeの使い分けです。あとでwatchについてもお話しますね。

(a) I looked everywhere, but didn’t see her. 「あちこち探したけど、彼女はいなかった。」

上の文でなぜ一方にlookを用い、他方にseeを用いているかがわかればテーマクリアです。もちろん、lookとseeを入れ替えて、*I saw everywhere, but I didn’t look at her.などとすることはできません。2つの間には明確な違いがあるからです。では、最初にlookから説明していきましょう。

I looked everywhere…「あちこち探した」の部分は、あらゆる方向に目を向けたという意味でしょ。ここでlookを使うのは、lookが「意識的に視線を向ける行為」を表すからです。だから、「ほら、見て」と人の注意を向けたいときには‘Look!’と言いますし、中学1年生の初めには‘Look at the blackboard.’「黒板を見てください」という英文を習います。もう、lookの基本は大丈夫ですね。

(b) Look at me when I’m talking. 「オレが話しているときはオレのほうを見ろ。」
(c) I didn’t have time to look at the newspaper. 「新聞を見る暇もなかった。」
(d) He was looking for the bag. 「彼はそのかばんを探していた。」

中学校では「look at = ~を見る」「look for = ~を探す」のように熟語として習いますが、前置詞atが一点(ポイント)を指し、forが目的(「~を求めて」の意味)を表すことを知っていれば、熟語として丸暗記に頼らなくてもよくなりますね。前置詞の基本的な意味を知っていることで、「look around = (~を)見まわす」も「look through = ~を通して見る」も同じように理解できるはずです。
さて、次はseeに移りましょうか。seeはlookよりもずっと豊かで深い意味を持っている単語です。とはいえ、そのコア(核)となる意味は一つですので、まずはそこから見てみましょう。では、もう一度(a)の文を見てみましょう。

(a) I looked everywhere, but didn’t see her. 「あちこち探したけど、彼女はいなかった。」

 but以下の部分にseeが使われていますね。「彼女はいなかった」というのは、「彼女は見当たらなかった」という意味です。大切なのは、今度は視線・目を向ける方向はまったく関係がないという点です。視線を向けるというのは、ある種の「意識的行為」ととらえることができますが、seeが表すのは「見える、見えない」という「事実」の部分です。要するに、seeのコアは「目で感知すること」なのです。意識的か無意識的かは、正直どっちでもかまいません。

(e) We can see Mt. Fuji from here. 「ここから富士山が見えますよ。」

対象が人であれ物であれ同じですね。見える、見えないという事実を表す文なのでseeを使っています。では、次の文はどうでしょう。

(f) I’m going to see Takashi for dinner tomorrow. 「明日、タカシと会ってディナーするのよ。」
(g) I’m seeing Kaori now. 「オレ、今カオリと付き合ってんだ。」

 状況によっては「見る」⇒「会う」となるのは理解できますよね。面白いのは、それがさらに変化して、「会う」⇒「(男女が)付き合う」となるところです。付き合うの意味ではふつう進行形を用います。

(h) Did you see what it was? 「それが何だかわかりましたか?」

ここからseeの持つ意味の豊かさ、奥深さへと踏み込んでいきます。例文(g)では、「見る」⇒「わかる」へと意味が変化していますね。日本のことわざに「百聞は一見に如かず」というのがありますが、これは「百回聞くより一回見たほうがよくわかる」という意味でしょ。つまり、「見ること=わかること」だと言っているのです。ちなみに、このことわざに当たる英語は‘Seeing is believing.’で、見てわかるから信じられるという理屈です。*Looking is believing.と言えないのは、もうおわかりですね。あぁ、それから、I see.「わかりました」というお決まりのセリフについては、もう説明無用ですよね。

 では、次の文は問題形式にしてみましょうか。look atが正しいか、seeが正しいか選んでみてください。

(i) Lucy could never ( look at / see ) herself as a teacher. 「ルーシーは自分が先生になるなんて想像もしなかった。」

 訳文から考えると、想像するというのは、「自分の将来の姿を意識的に見てみる」と言うことができると思います。でも、答えはseeです。「自分が先生をしている姿が見えなかった」と考えてください。この文は否定文ですが、肯定的内容で考えると、想像するという行為は何かが見えることが前提となる行為。だからseeです。似た例をもう一つ挙げてみましょうか。See what you can do!「自分にできることを考えろ!」これもseeです。訳文が「想像する」であれ、「考える」であれ、頭の中で何かを見ているのですからseeを用います。

 長くて飽きてきたでしょうから、残り2つは一気に行きましょう! (^^)v

(j) Let me see what’s in the box. 「箱の中に何があるか確認してみるよ。」
※「~を確認する」「~をチェックする」は、目を向けて、それを認識する行為なのでseeです。
(k) The tree has seen a lot of car accidents. 「その木の前で多くの自動車事故が起こってきた。」
 ※その木は自分の目の前で何度も事故を経験してきたのです。「~を経験する」もsee。

 さて、seeの例文をたくさん見てきましたが、いろいろな訳語があることに気づきますね。訳語の多さに圧倒されることなく、「目で感知すること」というseeのコアに関連付けて習得していってください。lookは「視線を向ける」という一方的な行為。それに対してseeは「目で見て、それを感知する」という双方向的な行為です。違いを意識しましょうね。

 では、最後にwatchを軽く見ておきましょう。watchは動いているものや動く可能性のあるものを意識的に目で追う(観察する)ときに用いる動詞です。そのコアは「動きや変化を目で追うこと」となります。一番わかりやすいのはバードウォッチングですよね。鳥の姿を観察する行為はまさにwatchの出番です。

(l) Watch out! 「気を付けて!」
(m) Watch your step! 「足元に気を付けて!」「足元注意(表示)」
(n) Kate watched the movie. 「ケイトはその映画を見た。」

(l)(m)については、定番のセリフですから、そのまま覚えてください。(n)はseeを使ってもOKですが、watchの方が長時間集中して見ていた感じが読み取れますね。映像や試合を見る場面では、漠然と見たのか集中して見たのかで、seeとwatchを使い分けるといいでしょう。

長くなりましたが、この辺で。SEE YOU…(^^)/

002 家( HOUSE / HOME )

HOUSEは「建物」としての家
HOMEは「本来の居場所」「家庭」としての家

 「ホーム」も「ハウス」もカタカナ英語として日本語の中に溶け込んでいます。中高生に「家という意味の単語は何か?」と尋ねると、「ホーム」と答える人の方が多いように思います。もちろん、「ホーム」で間違いはないのですが、本当のhomeの意味を知って、いやhomeとhouseの違いを知って答えている人はほとんどいません。

 上の質問に答えるのであれば、むしろ「ハウス」でしょう。日本語には「うち」という言い方がありますが、私たちは「家」と「うち」を無意識のうちに使い分けています。あえて言うなら「家=house」で「うち=home」(完全なイコール関係ではありません)となります。その違いは、houseは「建物」としての家で、homeは「本来の居場所」「家庭」としての家です。

(a) Sam left home at the age of 19. 「サムは19歳で家を出た。」
(b) Sam left Mika’s house at seven twenty. 「サムは7時20分にミカの家を出た。」

homeは家庭を意味するわけですから、(a)は19歳で両親の家を出て自立した暮らしを始めたということを表します。一方、(b)は他人の家を出たのですから、当然「建物」としての家を意味します。この違いがわかれば、次の文で2つの家が使い分けられているのもわかりますよね。“We’ve just moved to this house, but it doesn’t feel like home yet.”「この家に引っ越してきたばかりで、まだ我が家のような感じがしない。」

ちなみにhouseはふつう一戸建ての家を表しますが、いわゆるマンションは英語ではapartmentと言います。(アメリカ英語でcondominium、イギリス英語でflatという言い方もあります。)もっと細かく言うと、マンションの建物全体はapartment houseとかapartmentsと言い、マンションの部屋(1世帯が住む場所)をapartmentと言います。英語ではマンションも昭和の匂いのするアパートも同じです。「じゃ、mansionはどういう意味?」と思うでしょう。英語では「大邸宅」という意味ですよ。デッカイ庭にプール…ってなイメージです。「館(やかた)」って感じかな。

さぁ、話をhouseとhomeに戻しましょう。houseが建物を指す一方、homeは「本来の居場所」を表すんでしたよね。だから、homeは「故郷(古里)」「本国」「祖国」という意味で使われます。また、動物の「生息地」や植物の「自生地」、物の「発祥地」「原産地」などの意味でも使われます。

(c) My home is Osaka. 「私の故郷は大阪です。」
(d) Where is your home? 「お国はどちらですか?(どちらのご出身ですか?)」
  ※ Where is your country?とは言いません。
(e) China is the home of pandas. 「中国はパンダの生息地です。」

 さらに、go home「家に帰る」やbe home「家にいる」の表現からもわかりますが、homeには副詞用法があります。入試ではon one’s way home「帰宅途中で」が頻出ですね。ここでon one’s way to homeとやるとバツになります。気を付けて!

001 行く・来る( GO / COME / GET)

GOは基点から離れる動き
COMEは着点に近付く動き
GETは着点に着くまでのプロセス

中学1年生になってすぐにgoとcomeという動詞を習います。goは「行く」、comeは「来る」というふうに。はっきり言うと、これは「スタート地点から間違っている」と言っても過言ではありません。「go⇒行く」これはほぼ正しいとしても、「行く⇒go」これは必ずしも正しくないということを教師は教えないといけません。comeが「行く」の意味で使われることが多々あるからです。つまり、「行く⇒goまたはcome」となります。

世代を超えて日本を代表する漫画である『サザエさん』で、サザエさんが「カツオ、ご飯よ~」というと、カツオが「姉さん、今行く~」と言います。このカツオのセリフを英語に直すとどうなるでしょう。“I will go.”とか“I’m going.”とかが頭に浮かんだ人は、残念ながら間違いです。正しくは“I’m coming.”と言わなければなりません。サザエさんのいる場所(食事をとる居間)に近付く動きだからです。ここで基点から離れる動きを表すgoを用いると、居間から離れていくことになり、「姉さん、ボク、出かけるから夕飯はいらないよ」と言っているようなものです。

goが基点から離れる動きを表すからこそ、その後に着点を表すtoと共に用いるのが基本となります。起点を離れて着点に向かう。この流れは当然ですよね。で、goの行き先がいつもわかっていればいいのですが、行き先が示されない場合は「(その場から)いなくなる・亡くなる・消える」という意味になります。

(a) All my money is gone. 「有り金が全部なくなった。」
(b) He decided to go. 「彼は立ち去ることにした。」「彼は自ら死を選んだ。」
(c) This car must go. 「この車は廃車にしなければならない。」
(d) You have to go. 「お前はクビだ。」
(e) My eyesight is going lately. 「最近視力が落ちてきている。」

もう1つ、例を挙げてみましょうか。これも中学1年生レベルの使い分けですが、「帰宅する」というときのgo homeとcome homeの違いです。もうお分かりだと思いますが、go homeは「友人の家に居るか、友人の家の近くにいて、そこを離れて自宅に向けて移動する」とき。come homeは「すでに帰宅しているか、自宅近くまで戻っている状況で、自宅に向けて移動している状況を表す」ときです。これは何となく使い分けられている人も多いでしょうが、これにget homeが加わるとどうでしょうか?get homeでは、友人の家を出てから自宅にたどりつくまでのプロセスや努力の結果が暗示されます。友人の家がメチャクチャ遠いとか、途中で渋滞に巻き込まれて大変だったとか、今日は体調不良でいつもよりも疲れたとか…「帰宅する」という言葉だけでは言い表せないニュアンスを持っています。また、駅まで行く「行き方」を尋ねる際に、ネイティブが“Could you tell me how to go to Tokyo Station?”とは言わずに、“Could you tell me how to get to Tokyo Station?”と言うのにも納得がいきますよね。「行き方」はプロセスですから。(※ 日本の中学校・高校では、教師の多くがこれらの単語の違いを理解していないため、“how to go to”でも正解になることが圧倒的に多いのが現状です。)

では、最後に次の2文の違いを見てみましょう。

(f) Can you go to the concert?
(g) Can you get to the concert?

言っておきますが、まったく違う意味ですよ。(f)が「行けるのか、行けないのか」という都合を尋ねているのに対し、(g)は行けるという大前提の下で、「ちゃんとコンサート会場に到着できるのか(行き方を知っているのか)」とか、何らかの事情で会場に来るのが困難という状況で「何とかして会場に来る手段はあるか」と尋ねています。このように両者は根本的に異なるのですから、くどいようですが「行き方」を尋ねる表現で「goでもgetでもよい」ということなどありえないのです。

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