QUESTION 2

次の問題を解き、出題者が問題を通して「受験生にどのような力を求めているか」を深く考えろ!

【問】次の英文の( )に適する選択肢を選べ。
Mr. Ito returned home from his detention in a Siberian labor camp and noticed that everything ( ).
① gone ② new ③ did ④ had changed

【解説】
文法を学ぶ際は、単に問題を解き、正解・不正解に一喜一憂するだけでなく、「何を学んでいるのか」をしっかり意識しながら学んでほしい。では、本問は文法項目(単元)で言うなら、何に分類されるだろうか?選択肢を見ると時制っぽいが、そうではない。正解は文型である(自動詞or他動詞、品詞などの関連知識を含む)。時制と考えると、「とりあえず選択肢を順番にカッコに入れてみて、訳して…」というようなアプローチになりがちだが、それでは本問を学ぶ価値はゼロである。もちろん、正確に訳すことができれば解けなくはないが、そもそもdetentionなどというマニアックな単語の意味を知る受験生はほとんどいない。そして、「文の意味が分からないから解けない」という定番のあきらめ口実を脳裏に抱きながら、最後には当てずっぽうに頼るハメになる。そうならないためにも、文型を学んでいるんだという意識をもって以下の解説を読んでもらいたい。

問題文の途中にandがある。andより前の部分を分析すると、Mr. ItoがS、returnedがVで、home、from his detention、in Siberian labor campがそれぞれ修飾語句(副詞)である。そして、andの後ろにnoticed thatと続くことから、Mr. Itoを共通の主語として動詞が2つあることに気づく(returnedとnoticed)。noticeはnotice that SV(SVだと気づく)の形で用いるため、カッコにはthat節内のVを選んで入れることになる。

この時点で、選択肢から①と②を消去できる。理由は①過去分詞や②形容詞はVにすることはできないからである。もちろん過去分詞はbe動詞を伴って受動態にしたり、haveを伴って完了形にすることでVにすることはできるが、過去分詞単独ではVにすることはできない。また、形容詞はCにすることはできるが、Vにはならない。以上のような理由から①と②は消去する。

では、③と④の違いはどこにあるのだろうか。それは自動詞か他動詞かにある。まず③doは原則として他動詞で使用する動詞で、その後ろには目的語(名詞)を伴うのが基本である。一方、④changeは自動詞としても他動詞としてもよく使用する。自動詞ならば「変わる」、他動詞ならば「~を変える」を意味する語である。本問はカッコの後ろがピリオド、すなわち、そこで文が終わっていることから、「everything ( ).」の2語だけで文(第1文型)が成立しなければならない。カッコの後ろに名詞があれば、それを目的語と考え他動詞を選択することになるが、ここでは名詞がないため自動詞を選択する。よって、答えは④である。

Mr. Ito returned home from his detention in a Siberian labor camp and noticed that everything had changed. 「伊藤氏はシベリア抑留から帰国し、あらゆるものが変わってしまったことに気づいた。」detentionは「勾留・留置」をいう意味で、detention in a Siberian labor campは「シベリア抑留」と訳した(直訳は「シベリアの労働キャンプにおける勾留」となる)。シベリア抑留とは、第二次世界大戦の終戦により武装解除され投降した日本人捕虜がソ連により主にシベリアに移送され、強制労働を強いられた歴史をいう。detentionの意味と歴史に関する知識があって初めて美しい訳ができることがわかる。では、出題者はこのような知識を英語の文法問題に求めているのだろうか。そんなはずはない。やはり、文法力が問われているのである。

このように、動詞に関する問題では、文型(自動詞or他動詞、品詞の知識などを含む)を常に意識するようにしてもらいたい。そうすることで、受動態、準動詞(不定詞・動名詞・分詞)、関係詞など多くの文法問題を解く際の素地ができるだけでなく、英文を正確に和訳する基本姿勢が身につくはずである。「とりあえず選択肢を順番にカッコに入れてみて、訳して…」というアプローチは今すぐ卒業せねばなるまい。

QUESTION 1

次の問題を解き、答えを導き出すための手順や理由を深く考えろ!

【問】日本語に合う英文になるように、( )に適する選択肢を選べ。
彼は無罪だとわかった。
He was found (                ).
① innocent  ② innocently  ③ innocence  ④ an innocence

【解説】
まず始めに、受動態の問題は能動態に戻して考えるようにしよう。これは受動態の主語は能動態の目的語であるという事実から言えることである。

(能動態)Tom loves Kumi.  第3文型(SVO)
(受動態)Kumi is loved by Tom.  第2文型(SV)←能動態のOが主語になったため、Oがない。

見ての通り、同じ動詞‘love’を使った文でも、能動態と受動態では文型が異なる。loveは「~を愛する」という意味の他動詞(目的語をとる動詞)であることから考えると、目的語を失った受動態は「動詞本来の使い方でない」ということができる。したがって、「受動態は、能動態に直すことで動詞本来の使い方が見えてくる」と言ってもよいことになる。では、問題文に話を進めよう。先述の事実に従って、まずは能動態の文に戻して考えてみることにする。

(能動態)We found him (            ).

問題文(受動態)にはby~が見当たらない。こういう文はby usやby them、by you、by people(us, them, youは全て一般的な人を指し、特定の誰かを指さない)が省略されていると考えて、能動態にする際の主語にはweやthey、you、peopleを補うとよい。(実際には動作主が不明の場合や動作主を言いたくない場合も多い。)ここでは上記のようにweを動作主と考えて能動態を作ってみた。

では次に( )の部分のはたらきについて考えてみよう。findという動詞は他動詞で、SVO、SVOO、SVOCの3種類の文型で使用可能。We found himの部分は明らかにSVOだから、問題は( )の部分が何のはたらきをしているかだ。仮にSVOだとすると、もうそれ以上文の要素(つまり、S / V / O / C)は必要ないので、( )には修飾語(M)として副詞が入ることになる。また、SVOOだとすると、( )はOだから名詞。SVOCなら、( )はCだから名詞または形容詞である。選択肢の②innocentlyは副詞で、「無邪気に」という意味。「私たちは無邪気に彼を見つけた」(能動態)や「彼は無邪気に見つけられた」(受動態)という日本語がおかしいことからもわかるが、innocentlyがfoundやwas foundの様子を表しているとは考えられない。よって、②は答えではない。次に③と④について考えよう。innocenceは「無罪・無邪気」という意味の名詞。能動態の文に③あるいは④を入れて、仮にSVOOの文だと考えてみると、「私たちは彼に無罪(無邪気)を見つけてあげた」となり、意味不明な文ができてしまう。SVOでもSVOOでもないとすれば、問題文は能動態に直した際にSVOCで使われていることがわかった。SVOCのCは名詞または形容詞だから、( )には①③④の3つが入る可能性があることになる。答えを絞るにはC(補語)の性質について知っておく必要がある。次の日本語を英語に直すとどちらの文が正しいか考えてみてほしい。

ケンは病気です。
① Ken is sickness.  (sicknessは名詞)
② Ken is sick.  (sickは形容詞)

正しいのは②。では、なぜ①は正しくないのだろうか?それは「sicknessが抽象名詞だから」である。例外的なものは除いて一般的に言うと、ペンや本のように実態がある(姿・形があり、触れることができる)名詞のことを普通名詞というのに対して、病気や死、友情や重要性のように実態がない(姿・形がなく、触れることができない)名詞のことを抽象名詞という。学校や多くの塾では習わないことだが、「抽象名詞がC(補語)になるのは、CがS(SVCのS)またはO(SVOCのO)と完全に一致するときだけ」という原則があるのをご存知だろうか。この原則を“Ken is sickness.”に当てはめると、「ケン=病気」が完全に一致することになる。これではまるでケンを病原菌扱いしているようなもので、「ケン=病気というもの」になってしまう。もちろん、ケンが病気なのは「一時的な状態」であり、たとえ不治の病を患っていたとしても、それは健康状態という前提に対して病気の状態であるという意味で、決して「ケン=病気」が完全に一致することはないのである。このような理由で、“Ken is sickness.”は不適切な文だと言える。sicknessが抽象名詞である一方、sickは「病気の」という意味の形容詞である。もう少し詳しく言うと、sickは「現在病気の状態の」という意味。だから、“Ken is sick.”はケンの現在の状態を表す文で、適切な文だと言うことになる。このように、Cに抽象名詞を置くときには注意が必要だということを覚えておいてほしい。

だが、抽象名詞にまつわる上記の説明があまりにも難しいと感じた人は、その回避策を伝授しておこう。一言で言えば、「第2文型では、Sが人ならCも人(Cが名詞の時)」というのが原則なのである。be動詞がイコール記号(=)のようなはたらきをしているのは理解できると思う。同様に、「S物=C物」や「S事=C事」も成立する。“Ken is sickness.”では、Sが人なのに対しCは事になっているため、正しい文だとは言えないのである。もちろん、この原則も第5文型ではOとCの間で同様のことが言える。

話を問題文に戻そう。We found him (          ).(SVOC・能動態)で考えると、もうお分かりであろう。「無罪・無邪気」という意味の抽象名詞であるinnocenceは入れることができない。これでは「彼=無罪」が完全に一致することになってしまうからである。「彼といえば無罪」と同時に「無罪といえば彼」が成り立たなければ完全に一致したとは言えない。これを第2文型で“He is innocence.”として考えてみると、「彼=無罪」が完全に一致するということは、彼は常に無罪なのであり、万引きをしようが、殺人をしようが無罪なのである。こんなことがありえるはずがない。したがって、答えは形容詞である①innocentとなる。“We found him innocent.”は「私たちは彼が無罪だとわかった(思った)」という意味。これを受動態にすると、“He was found innocent.”となり、「彼は無罪だとわかった」という意味を表すのである。

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